なかなか勉強に取り掛からない。
やり始めたかと思いきやすぐ脱線。
「わからない」の連発。
教えようと思ったのに、素直に聞き入れてくれず親子ゲンカに発展…。
発達凸凹の特性を持つ子どもたちが勉強に取り組む際、親は多くのストレスを感じることがあります。「毎日勉強をさせる時間がつらい」と悩んでいませんか?
実は、環境づくりやちょっとした工夫、親の声掛けで、驚くほどスムーズに勉強できるようになるのです。
この記事では、毎日コツコツと計画的に学習することが難しい子どもたちに対して、親がどのようにサポートすれば良いのか、具体的な方法と効果的な声掛けについて紹介します。
元小学校教諭の発達グレーっ子のママが、
現場で行っていた支援を元に解説します♪
発達凸凹の特性を持つ子どもに対する理解と対応
発達凸凹の子どもに効果的な学習環境
発達凸凹の子どもにとって効果的な学習環境を整えることは、集中力を高め、学習効果を向上させるために重要です。
静かで整理整頓された環境は、刺激が少なく、子どもが集中しやすくなります。特に、視覚や聴覚に敏感な子どもにとっては、余計な刺激を排除することが大切です。
以下のような環境作りが効果的です。
- 静かな場所を選ぶ:学習スペースはできるだけ静かな場所に設定する。
- 整理整頓:必要な教材や道具を整頓し、すぐに取り出せるようにする。
- 静かな場所を選ぶ
- テレビを消したり、窓を閉めたりして、余計な音を遮断する。
- 静かな部屋や静かな場所を、学習場所として設定する。
- イヤーマフやデジタル耳栓を使用する。
- 話しかけるときには、子どもの注意をはじめに自分に向ける声掛けや合図をする。
- 机は壁に付けたり、仕切り板を使用したりし、視覚的にも静かな環境にする。
- 整理整頓
- 学習に不必要なものは目につかないところに片づけておく。
- 学習に必要なものはすぐに取り出せるようにあらかじめ、ひとまとめにしておく。
これにより、発達に特性のある子どもは安心して学習に取り組むことができ、学習への集中力も高まります。
ASDの特性と学習サポート
視覚支援を活用したスケジュール作り
ASDの特性をもつ子どもたちは、日常のルーティンが非常に重要です。視覚的なスケジュールを使うことで、学習の進行を視覚的に理解しやすくなります。
視覚的支援を使うことで、ASDの子どもたちは予定を見通せるようになり、安心感を得ることができます。学習の流れが視覚化されることで、次に何をするかが明確になり、混乱を防ぎます。
例えば、以下のような視覚支援を活用することが考えられます。
- タイムテーブル:朝の準備、学習、休憩、食事、遊びなどを視覚的に示す。
- 絵カードやプロンプト:持ち物確認、手順確認、意思疎通やソーシャルスキルトレーニングに使う。
- タイムテーブル
- スケジュールの見える化で、安心感を与えることができます。毎日の勉強ルーティンを時系列に沿って示して、学習の流れを可視化しましょう。
- 出来たら、それに印をつけたり、ボードをひっくり返したりして、達成感を感じさせるのもおすすめです。
- 絵カードやプロンプト
- 持ち物や置き場所を示す際に、写真やイラスト、記号を準備しておくと迷うことなく動くことができます。
- 言葉だけでうまく行動に移せない凸凹っ子には、写真やイラスト、記号などを使ったカードを見せながら指示することで、「今やるべきこと」が伝わりやすくなります。
- 初めていく場所や普段と違うことに対して、「こういうことをするよ」と知らせるときに使うことで、不安な気持ちを和らげることもできます。
- 自分の要求を伝える練習にも使えます。
これにより、子どもたちは日々の活動を予測でき、安定して学習に取り組むことができます。
あいまいな言い方を避け、はっきり明確な指示で伝える
ASDの特性をもつ子どもたちは、コミュニケーションの苦手さがあります。
長く説明されたり、一度にたくさん言われたりすると混乱してしまうことがあるので、指示は簡潔で具体的な表現にするのが望ましいです。また、言外に含まれた言い回しなどは理解しにくいので、指示は直接的に出しましょう。
例えば、以下のようなポイントに気を付けて声を掛けることが望ましいです。
- 短く伝える
- 具体的に伝える
- 直接的に伝える
- 短く伝える
宿題をしたら、明日の時間割をして、全部できたら遊んでいいよ。
まず、この宿題を終わらせよう。
ひとつの指示にいくつもの内容が入っていると混乱します。できるだけ、一度に伝えるのは一つの内容にして、簡潔に伝えましょう。
見通しが必要なお子さんには、前述のタイムテーブルや絵カードを用いて、チェックリストにして一つずつクリアにしていく方法がおすすめです。
- 具体的に伝える
早く宿題しなさい。
5時までに算数の問題5問を解いてみよう。
「早く」「しっかり」「きちんと」など、つい言ってしまいがちな言葉は、ASDの特性をもつ子どもたちにはわかりにくい表現です。
抽象的な表現・あいまいな表現でなく、例を出したり、数字で表したり、何をいつまでにするべきか、などを具体的に示しましょう。
- 直接的に伝える
いつまでゲームしてるの?時計を見なさい。
約束の30分を過ぎたから、ゲームは終わりだよ。
ASDの特性をもつ子どもたちは、言外に含まれた意図を察するのが苦手です。また、想像して動くことが難しいため、言われたこと以上の行動に意識が向かないことがあります。
例えば、「時計を見なさい」と言われた場合、「あ、約束の時間を過ぎてるからゲームをやめなきゃ!」とはならず、「時計を見るだけ」という対応になってしまうのです。
言葉そのままで伝わる直接的な言い回しを心掛けましょう。
ADHDの特性と勉強方法
短時間で集中できるタスク分け
ADHDの特性をもつ子どもたちには、短時間で集中できるタスク分けが効果的です。長時間の学習は集中力を持続できず、逆効果になることがあります。
短い時間で集中しやすいタスクを設定することで、達成感を感じやすくなり、モチベーションが維持されます。また、頻繁な休憩を挟むことで、集中力をリセットしやすくなります。
具体的な方法として、以下の点が有効です。
- タスクの細分化:大きな課題を細かく分けて、短時間で完了できるようにする。
- タイマーの使用:例えば、15分勉強して5分休憩するなど、タイマーを使って時間を管理する。
- タスクの細分化
行動を細かく分解することが、ADHDの特性をもつ子どもたちが気分よく動くためのカギです。勉強までの段取りを細かく分けて分解しましょう。
「ランドセルから宿題を出そうか」
「ドリルを開いてみようか」
「宿題しなさい」と言われると反発したくなりますが、ランドセルから宿題を出すくらいなら「やってもいいかな」と思えますよね。
これにより、子どもたちは効率よく学習を進めることができ、学習への抵抗感も減少します。
- タイマーの使用
- 音が鳴ったら行動するという習慣づけにすることができます。
- カウントダウンで時間の使い方を意識させることができます。
ADHDの特性をもつ子どもたちは、次の行動への切り替えが苦手です。時間感覚の弱さや過集中が原因で、時間が経過していることを忘れてしまうためです。
そんなときには、タイマーが有効。作業に没頭していても、タイマーをセットしておけば、音で時間の経過に気付くことができます。「音が鳴ったらやる」と条件反射的に動けるようにしていきましょう。
音だけでなく、目で見ることも大事。視覚的に時間の経過を見ることができるタイマーやアプリをおすすめします。目でも時計やタイマーを確認するクセが身に付けば、だんだんと時間を意識できるようになってきますよ。
ADHDの子どもに合った休憩の取り方
ADHDの特性をもつ子どもたちにとって、適切なタイミングで休憩を取ることは、集中力を維持するために重要です。
適度な休憩を挟むことで、集中力が持続しやすくなり、疲れを感じる前にリフレッシュすることができます。なので、あらかじめ、休憩をタスクに入れておくことをおすすめします。特に、身体を動かす休憩は効果的です。
以下のような休憩の取り方が効果的です。
- 短い運動:ジャンプやストレッチなど、軽い運動を取り入れる。
- リラクゼーション:深呼吸や瞑想など、リラックスできる方法を試す。
- 短い運動
- ジャンプ
- 伸び
- 簡単なストレッチ
- トイレに行く
- リラクゼーション
- 飲み物を飲む、おやつを食べる
- 軽く目を閉じたりする
- 外の空気を吸う
これらを取り入れることで、体の血流が良くなったり、すっきりしたりして気分転換になります。子どもは集中力をリセットしながら学習を続けることができ、学習効率も向上します。
SLDの特性と対応
SLDの子どもの勉強方法の工夫
かつて「LD・学習障害」と呼ばれてきましたが、最新版のDSM-5から「SLD・限局性学習症」と呼ばれるようになりました。知的な発達の遅れはないにもかかわらず、読み・書き・計算など、ある特定の領域、またはいくつかの領域の習得だけが、他に比べてうまくいかない状態を指します。
下記6つのどの領域に苦手が生じているか確認しましょう。
- 文字の読み:音読が苦手
- 文の理解:文字は読めるけど、言葉や文の意味を理解することが苦手
- 綴字:ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットなど文字を書くことが苦手
- 作文:文法的・語法的に正しい文章を書くことが苦手
- 数字の理解や計算:数の概念や計算が苦手
- 数学的推論:問題文から情報を整理したり、パズル的な問題を解いたりことが苦手
LD(SLD)のある子どもたちが勉強につまづいている際は、まずは「どんなときに困っているのか」を子どもに直接聞いてみましょう。親から、または学校から見た子どもの様子と照らし合わせて、勉強方法の工夫をしていくことが必要です。
以下、それぞれのつまづきに対して行える工夫です。
- 文字の読み
- 定規や窓付きシートを当てながら読む
- 言葉や文節ごとに“/”を書き込んだり、マーカーで目立たせたりして、言葉のまとまりを意識させる
- 書体を読みやすいフォントにする
- 文の理解
- 言葉や文節ごとに“/”を書き込んだり、マーカーで目立たせたりして、言葉のまとまりを意識させる
- 絵やイラスト、図の多い本を読む
- 音声教材を利用する
- スマホ・タブレットの読み上げ機能を利用する
- 綴字
- 大きなマス目、補助線入りのノートを使う
- 漢字は分解してパーツごとに分けて、意味とセットで覚える
- 「“口”はたて・かく・よこ…」などのように、書き方を唱えて覚える
- 空中に空書きする
- 代替手段として、タブレットやパソコンを使用する
- 作文
- 「いつ」「どこで」「誰が」「何をして」「どう思ったか」など、一問一答形式でメモ書きする
- 構成表(テンプレート)に当てはめながら書くようにする
- 誤字脱字、文法についてチェックリストで見直しをする
- 数字の理解や計算
- 日常生活で数を数えたり意識したりする
- 九九は唱えるだけでなく、表で視覚的に覚える
- 位ごとに色を変える
- 計算の際には線を引いて位を揃える
- モノや絵を使って計算する
- そろばんや計算機を使用する
- 数学的推論
- 数量をイメージ化できるよう、場面ごとにイラスト化させる
- 文章を図式化させる
- 単位の概念や公式はいつでも確認できるようにしておく
- 数量のイメージに自分の体験や感情をリンクさせる(多いと嬉しい、少なくて悔しいなど)
- 映像教材を使用する
苦手さの裏には、視覚認知の弱さ、音韻処理力の弱さ、協調運動の苦手さなど、複数の脳機能の弱さが複雑に関連していると言われています。そのため、ビジョントレーニングも有効です。
学びやすい教材や支援を選ぶことは、学習効果を高めるために重要です。適切な教材や支援を使うことで、子どもは学習内容をより深く理解しやすくなります。また、興味を持ちやすい教材を選ぶことで、学習意欲が高まります。
マルチセンサリーアプローチ(多感覚学習法)の導入
LDの子どもたちにはマルチセンサリーアプローチが有効です。マルチセンサリーとは、視覚・聴覚・触覚など複数の感覚を活用することです。
複数の感覚を使うことで、情報が脳に複数の経路から伝わり、理解や記憶が深まります。視覚的な教材や実際に手を使って学ぶことで、より具体的な理解が得られます。
以下のような方法を試すことができます。
- 視覚的教材:図やイラストを使って説明する。
- 聴覚的教材:録音された説明や音声ガイドを使う。
- 触覚的活動:文字を書く、形を作るなど、実際に手を動かす活動を取り入れる。
- 視覚的教材
- フラッシュカード
- 文字や絵、写真
- 色分けされた文字やカード
- デジタル教科書
- ビデオやYouTubeなどの動画
- 表やグラフ、図
- マーカーや色鉛筆
- デジタルカメラ
- そろばんや計算機
- スペルチェック機能
- 聴覚的教材
- 音声読み上げ機能
- 歌やリズム、韻
- 楽器
- チャンツ
- 触覚的活動
- 文字を書く
- タブレット
- 粘土
- パズルやブロック
- ボール
これらの活動を組み合わせることにより、子どもたちは学習内容をより深く理解し、自信を持って学ぶことができます。
発達凸凹の特性を持つ子どもたちに対して、それぞれの特性に合わせた学習方法を取り入れることで、学習効果を高めることができます。
親が子どもの特性を理解し、適切な環境を整えることで、子どもたちの学習意欲を引き出し、楽しく学ぶことができるでしょう。
親の不安とストレス管理
親のメンタルケア
親自身のメンタルケアは非常に重要です。リラックスする時間を持つことで、心身の健康を保つことができます。
親がリラックスできる時間を持つことで、ストレスが軽減され、子どもに対しても余裕を持って接することができます。ストレスが軽減されると、家庭内の雰囲気も良くなります。
具体的な方法として、以下の点が有効です。
- 趣味の時間を持つ:自分の好きなことをする時間を確保する。
- リラクゼーション法を実践する:ヨガや瞑想などを取り入れる。
これにより、親もリフレッシュでき、子どもとのコミュニケーションもスムーズになります。
専門家の相談とアドバイス
専門家に相談することで、適切なアドバイスを得ることができます。発達凸凹に詳しい専門家の意見を取り入れることで、効果的なサポートが可能になります。
専門家は最新の情報や研究結果を基に、具体的で実践的なアドバイスを提供してくれます。専門的な知識を活用することで、子どもの特性に合ったサポートを行うことができます。
以下の方法で専門家に相談することができます。
- 定期的なカウンセリング:発達専門のカウンセラーとの面談を定期的に行う。
- 地域のサポートセンター:地域の発達支援センターに相談する。
これにより、親は安心して子どもをサポートでき、子どもも適切な支援を受けることができます。
他の親との交流と情報交換
同じ悩みを持つ親との交流は非常に有益です。情報交換を通じて、様々な解決策やサポート方法を学ぶことができます。
他の親との交流は、共感を得られ、孤独感を軽減する助けになります。また、他の家庭の経験から学ぶことで、新しい視点や方法を取り入れることができます。
以下の方法で他の親と交流することができます。
- 親の会に参加する:地域の親の会やオンラインコミュニティに参加する。
- 情報交換の場を作る:SNSやメーリングリストを活用して情報交換を行う。
これにより、親自身もサポートを受けることができ、子どもに対してもより効果的なサポートができるようになります。
効果的な声掛けと学習サポート方法
ポジティブな強化
ポジティブな強化は、子どもの学習意欲を高めるために効果的です。具体的に褒めることで、子どもは自信を持って学習に取り組むことができます。
成果に対して具体的に褒めることで、子どもは何が良かったのかを理解しやすくなります。また、ポジティブなフィードバックは自己肯定感を高める効果があります。
例えば、以下のような褒め方が考えられます。
- 具体的な褒め言葉:「今日は計算が早くできたね!」など、具体的な行動を褒める。
- 成果の共有:「この問題を解けたのはすごいね!」と成果を一緒に喜ぶ。
これにより、子どもは自分の努力が認められていると感じ、学習に対するモチベーションが向上します。
柔軟なアプローチ
子どもの気分や状態に合わせた柔軟なアプローチが大切です。状況に応じた対応を取ることで、子どものストレスを軽減し、学習効果を高めることができます。
一日の中で子どもの気分や体調は変動します。それに応じて学習の方法や声掛けを調整することで、無理なく学習を進めることができます。
具体的な柔軟なアプローチとして、以下の方法があります。
- 状態に合わせた休憩:疲れた時には短い休憩を取る。
- 気分転換の方法:リラックスできる音楽を聴いたり、軽い運動をする。
これにより、子どもはリフレッシュしながら学習を続けることができ、学習の質も向上します。
自己肯定感を高める声掛け
自己肯定感を高める声掛けは、子どもの成長にとって非常に重要です。努力を認める言葉をかけることで、子どもは自分の価値を感じやすくなります。
子どもが自己肯定感を持つことで、自信を持って新しいことに挑戦しやすくなります。また、困難な状況でも前向きに取り組む姿勢を育むことができます。
以下のような言葉掛けが効果的です。
- 努力を認める:「頑張って宿題を終わらせたね!」
- 過程を褒める:「考えながら丁寧に取り組んだね!」
これにより、子どもは自分の努力が認められていると感じ、さらに努力する意欲を持つことができます。
まとめ
発達凸凹の特性を持つ子どもたちに対して、適切な学習方法と声掛けを取り入れることで、親子のイライラを減らし、楽しく学習する環境を作ることができます。親が子どもの特性を理解し、柔軟な対応を心がけることで、親子関係も改善され、子どもの学習意欲も向上するでしょう。